カフナとは何か
サージ・カヒリ・キング
翻訳 M. Hayashi
ハワイのカフナ(Kahuna)に関して多くの誤解が今もありますので、それらをはっきりさせるために書いておこうと思います。
1865 年に発行された最初のハワイ語辞典の著者ロリン・アンドリューズ(Lorrin Andrews)によると、カフナとはカフ(kahu;特にかまどで、料理する)と、アナ(ana;語に進行中の意味を付与する不変化詞)の短縮形です。この見解によると、基本的に「料理」を意味します。しかし、カフは「かまどの番をする、料理を担当する」という意味もあるのを知らなくては、あまりピンときません。私たちの見方では、古代ハワイ人は抽象的かつ比喩的に思考し、ある一つの活動や経験を表わす単語は、抽象的に関連した他の活動や経験を表わす為にも用いることが出来ました。ですからカフは、元来のかまどの番をする、から派生し、何かを世話するという一般的な意味を持つようになりました。しかしながら、カフナのもう一つ可能な語源として、カフ(kahu;世話をする)とナ(na; 名詞形にする不変化詞)が単に組み合った、というのがあります。その場合は、カフナの基本的な意味は世話人になります。
時を経て言語は変化し、ある時点でカフとカフナは両方とも、少し異なる意味の名詞になりました。カフという単語は世話人だけではなく、介護者と称される人物や、行政官、評議員、牧師、師匠、家の女主人、犬の飼い主、クラブや協会、組織や他の集団の長を意味するようになりました。ハワイ文化初期の研究者であるJ S エマーソン(Emerson) によると、カフナという言葉は「地域における司祭の職業的な関わり」を示すようです。
前記のアンドリューズは、カフナを商品や技術を持っている専門職に用いられる一般名称であると定義しています。彼は、kahuna lapa'au(医者)、kahuna pule(司祭)、kahuna kalai la'au(大工)、kahuna kala(銀細工士)など、職能を限定する言葉が通常付随すると述べています。カフナに職能を限定する単語が付随しない場合、(たいていは)司祭または犠牲を払う人物を意味する、とも彼は記しています。現代標準ハワイ語辞典の著者であるプクイ(Pukui)とエルバート(Elbert)は、カフナを「司祭、占い師、魔法使い、魔術師、聖職者など、何かの専門職における熟達者(男女に関わらず)」と、定義しています。そして1845 年のハワイ王国法以降は、医者、外科医、歯科医をカフと呼ぶと付け加えています。
『ハワイの遺産』("Hawaiian Antiquities")の著者であるデビッド・マロ(David Malo)は、組織についての詳細には触れず、カフナを単に司祭あるいはヒーラーとして記述しています。サミュエル・カマカウ(Samuel Kamakau)は、『古の民族』("The People of the Old")で、占い師、ヒーラー、司祭、預言者の階級について少し詳しく扱い、地質学者、風水師、霊能力者、武術家、槍を投げる者など、他の多くの階層をカフナに加えて言及しています。
『ハワイの支配する長たち』("Ruling Chiefs of Hawaii")の中でカマカウは、カフナを地質学、霊感知覚、航海学の師匠であるPaka'a としてカフナを記述しています。彼はまた、偉大なカメハメハによって選ばれ、カヌー作り、サーフボード作り、器作り、染色、航海術や多くの他の手仕事を任された多くのカフナの職人についても、記述しています。補足としてカマカウは、カフナになる為に訓練を受けている少年たちが従っていた規則についても簡単に述べています。ジョン・パパ・イイ(John Papa I'i)は、1866 年から1870 年にかけ、当時の司祭のカフナや医師のカフナについてかなり大量に詳細な記述をしています。
プクイ、ヘルテッヒ、そしてリー(Pukui,Hertig and Lee)による『源に眼を向ける』第一巻("Look To The Source"Vol.One)では、古代ハワイのカフナは占い師、司祭、ヒーラーの役として論じられていますが、ある頁に、誰が書いたにせよ限定された知識に関する簡単な記述ですが、「既に存在しない伝統的な作法によりカフナは、集中的に訓練された」という脚注を加えています。第二巻では、カフという単語はアンドリューズが付け加えた様にana を語尾に付して、師匠あるいは熟達者として定義されています。すぐその後にメアリー・プクイは、彼女の祖父をカヌー作りのカフナ、魚採りのカフナそして医療のカフナとして記述されているのを引用しています。この後、占い師、預言者、近代的偽者やヒーラー、自分自身のクライエントからだけカフナと呼ばれた霊能者に関する短い記述と共に、医療のカフナに関する興味深い章が続いています。
さらに興味深いことに、仕事への支払いに関する短い記述があります。近代のハワイではある人々が、医療のカフナは従来仕事への支払いを要求しなかったと信じられていますが、初期ハワイの著作家が、少なくともたまには、カフナは確かに豚、食物またはタパ(織物の一種)の贈り物を彼らの援助との交換として受け取っていた、という引用が載っています。そして、あるカフナは貨幣経済が普及した折に、料金を設定したと述べています。
さて、カフナに関するこの非常に短い歴史的な考察から私たちは何を学ぶことが出来るでしょうか?
- 彼らは古代ハワイの熟練者であり、宗教、医療、手仕事、科学、心理学、そして魔法に熟達していた。
- カフナはM.D.(医師)や、Ph.D(哲学博士)の様な肩書きで、専門分野を指定する記述的な言葉が付随して用いられた。
- ドクターという単語の今日的な用法が医師を意味すると一般的には捉えられている様に、カフナは一般的に司祭かヒーラーを一般的に意味した。
- 専門分野における師匠か地域のどちらかからに、熟練者として認められる為、カフナは集中的で、そして長く広範な訓練を受けた。
- 何人かのカフナは多くの分野の熟練者であった。
- 男女ともカフナになれた。
- 上記では明確に述べられてはいないが、前記の資料を読むと、どの分野のカフナも専門分野の物理的な側面と同時に、霊的な側面に常に意識が向けられていた。
- (ハワイ:訳者)王国においてはカフナという熟語は熟練者と認められた、特に司祭や医療関係従事者の、外国人に用いられた。
ハワイが観光客の目的地となった領土時代には、訪問者はその海岸で最高のサーファーは、「最も偉大なサーファー・カフナ」(kahuna nui he'e nalu)と称されるのを知りました。その熟練さゆえに、彼はサーファー仲間のリーダでもありました。ボードや波についての彼のアドバイスや技術そのものに、皆が従いました。彼は省略してkahuna nui と呼ばれ、間もなく大いなるボス、またはハンバーガを含めたあらゆる領域の「最も大きく、最高」をさえ意味する、「偉大なカフナ」(big kahuna)と呼ばれる様になりました。
今日カフナという単語は、多様な方法で用いられ、また誤用されています。伝統的なハワイの知識や訓練のないある人々がカフナとして認証されたと公言します。そのことを古いハワイ人は嘲笑し、またはショックをうけます。あるハワイ人は、カフナという言葉を自動的に占いと結びつけるので、恐れます。あるハワイ人は、ハワイ人でなければカフナになれない、と言います。ある人々には霊能力によるヒーラーを意味し、ある人々にはシャーマンを意味するカフナを探す為に、人々はハワイを訪れます。
誰かが本当にカフナかどうかはどうやって分かるのでしょう?確立され迅速な見つけ方はありません。これまでもなかったのです。この言葉をハワイ語の文脈の中で何らかの意味を持つものとするには、ハワイ文化の深い知識と理解が不可欠でしょう。古代ハワイにおける主な審査内容は、ハワイ人にとって重要なある特定の分野で熟練度でした。師匠がその肩書きを授けました。ですから、自分の師匠を指名するのが(カフナと認められる為の::訳者)一つの条件でもありました。
私は元来カウアイ島出身であるカヒリ家のラカ(Laka)叔母と、ワナ(Wana)叔父により、シャーマニズムに近い意味合いの'kalakupua'、あるいは省略して'kupua'と称される伝統的な方法で訓練を受けました。私は1957 年に、ジョセフ・カヒリの孫として家の一員になりました(hanai')。(父と一緒の時も含め)二十年以上の訓練の成果に基き、私の最後の教師であるワナ・カヒリから、カルフォルニア州のゴレタ・ビーチで、『カフナ・クプア』(Kahuna Kupua)の称号を授けられました。同様の名誉を与られる多くの人々と同じく、個人的な儀式でしたから、証明する人物は居ませんし、認定書もありません。ですが、私は自分が何を知っているかを知っていますし、私が知っていることをどのように行うかを知っています。私にはそれで十分なのです。
しかしながら、私はその称号をもはや使いません。私が学んだハワイ文化の一側面は、もしそうする必要がないのならば、他の人を不愉快にするのを避けるということです。あるハワイ人は私がそれを使うのを嫌います。ですから、私は私の組織(フナ・インターナショナル:訳者)では肩書きで呼びたい人にはカフ(Kafu;長)であり、私が心理学の博士号を持っているのを知らせたい人にはキング博士であり、他の世界中の人々には単にサージです。私はハワイ名も持っていますが、生みの親に敬意を表すため、彼らが与えてくれた名前を公的には用いています。
それではカフナとは何でしょうか?あなたがそうだと思われる通りの肩書きなのです。もしあなたがカフナに会ったら、その人の肩書きよりもその人自身を尊敬してください。